重松清『世紀末の隣人』

直木賞受賞第一作は世間を騒がせた事件の足跡を「読み物作家」としてのスタンスから追おうとするルポルタージュ。確かに「読み物作家」的な視点や思考回路が垣間見えて興味深いのだが、気になるのは、ある種のエクスキューズとして「読み物作家」という言葉が何度も何度も持ち出されることである。

そもそも著者が「逃げ口上」など打っていなかったことは、本書を読了し、ついでに拙文冒頭を読み囓った読者には明らかなはずなのだが、

と巻末の解説者は書いているが、俺は、そうは取れなかった。読み物作家が「寄り道」「無駄足」「蛇足」を意識的に行い、周縁から事件を探るという手法は、確かに面白い。だから別に寄り道や無駄足や蛇足でも全く構わないのだが、どうせ読み物作家だから本格的なルポなど書けませんよ、といったエクスキューズに聞こえたために、何とも釈然としない読後感だった。