- 作者: 重松清
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2003/08/21
- メディア: 単行本
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『パパといっしょに』にまつわるトラウマを引きずり、愚痴やモラトリアムや哀しみや居直りを纏い、自分を情けなく思いながら生きる姿――これは重松清の中年の主人公に多く採用される人物像である。いつまでモラトリアムなんだ……と読んでいてイライラする箇所も正直ある。
が、『パパといっしょに』を読んで絵本の編集を夢見て出版社に就職した新人編集者、彼女の存在が、主人公のどうしようもない寂しさと相まって、どうにも良い。「絵本」という柔らかく温かく前向きなモチーフに合った登場人物と言える。彼女は若く、正しい。しかしその若さと正しさが、主人公には辛い。俺はどちらも好きなタイプではないが、少なくとも物語の中では、2人が対比されることにより、より興味深いキャラクターになっている。
現実や過去や自分自身といつまでも向き合わない主人公の姿は、読んでいて息苦しいところもあるが、物語(日常?)の温かさと苦さを感じたい人には、必読。