江口宏志+北尾トロ+中山亜弓+永江朗+幅允孝+林香公子+堀部篤史+安岡洋一『本屋さんの仕事』

本屋さんの仕事 太陽レクチャー・ブック005

本屋さんの仕事 太陽レクチャー・ブック005

仕入れ値も売り値もほぼ固定されており、しかも店側で商品そのものに手を加えられない本屋という業態がビジネスを拡大させるには、大きく2つの基本路線があるように思う。

  1. より多くの本を売ることでスケールメリットを享受する
  2. 本以外のモノ(雑貨など)も売ったり、積極的にイベントを仕掛けたり、扱う本のジャンルや価値観やスタンスを鮮明することで顧客を惹きつける

1の本屋も2の本屋も、最近どんどん増えている。反面、いわゆる「街の本屋」は、数も存在意義もどんどん減っている。スケールメリットを享受できない小さな本屋ほど、価値観やスタイルを明確にして差別化を図らなければ、スケールに勝る大規模本屋に負けてしまうのは明らかである。しかし結局は、価値観やスタイルにおいても大規模書店の方が明確に伝わってくるし、居心地の良いことがほとんどである。大規模書店やAmazonが勢力を伸ばす中、遅かれ速かれ、街の本屋は2に梶を切るしか生き残る道はないように俺は思うのだが、現実には、そうなってはいない。
本書は、そのような現状を踏まえた示唆に富む対談である。古書店についての本は多いが、新刊書店について深く掘り下げた本はあまり見かけたことがないので、俺はけっこう楽しめた。