- 作者: 村上春樹
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2009/05/29
- メディア: 単行本
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さて、いつも書くのだが、小説の感想を書くのは難しいなあ。特に村上春樹の感想は。ひとまずは、いくつか気づいた点をピックアップするにとどめたい。
- 主人公がクサい比喩を使ったり「やれやれ」と言ったりしない
- 主人公に「青豆」「天吾」という名前が与えられている。そりゃあカフカだってそうだったのだが、春樹作品全体で言えば、そういうタイプの作品は少ない
- 主人公の父親が出てくる。さらには、主人公が父親と向き合っている(向き合おうとする)
- 明らかにオウム真理教の一連の事件を意識している(ストーリー展開というよりは、モチーフとして、ということだけど)
村上春樹は最近「名作」の翻訳を立て続けに行っているし、カフカを書いたあたりから「総合小説を書きたい」と何度も発言している。俺は「総合小説ってなあに?」というレベルの人間だが、ドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』がその代表的な作品だそうだ。
その前提を踏まえて以上の特徴を見てみると、なるほど、確かにこれまでとは違う作品かもしれない。あえて村上春樹的な要素を(表面的には)減らしているような気がする。いわゆる「近代」的な小説というか、これまでの村上春樹ワールドには無いような骨太で壮大な物語を「村上春樹らしいやり方」で書こうとしているのかな、と思った。