林望『節約の王道』

節約の王道(日経プレミアシリーズ)

節約の王道(日経プレミアシリーズ)

金を下ろす時には34000円を下ろせといったことを帯で書いていたので、それの何が節約術になるのだろうと気になって読んでみた。要は、10000円札を崩した時点で、細かい札はどんどん使ってしまうので、3000円や4000円といった端数も一緒に下ろすことで、10000円札を崩さないようにしようという意識が働き、節約になるのだ――という内容だった。なんじゃそりゃ。
また、俺は最近、小銭入れと札入れを別に持っていることもあって、小銭入れを持ち運ぶなという主張も気になっていたのだが、これは要は「小銭入れでパンパンの財布を持ち歩いたり、パンパンに膨れ上がった小銭入れから1円単位で小銭を探している姿はスマートではない」というだけの話である。そして解決策は、1円や5円といった小さな小銭は釣り銭を貰うたびに寄付をして、100円や500円は直接ポケットに入れる――というものであった。なんじゃそりゃ。
全部の節約術がこの調子で、電車の移動中の暇つぶしで読んだり、酒の肴としてネタにするために読んだりする程度であれば別に構わないが、期待して読むとたぶん後悔する。まあリンボウ先生のファンやユルいエッセイの好きな方も一定数いるだろうから、決して悪い本じゃないんだけど、本当に節約術が知りたい方は「ふーん」で終わるような気がする。
なお本書では「スマートではない」「みっともない」という表現が多発するのだが、まあスマートであることについては(自己満足的に)重要かもしれないなとは思った。俺も最近、膨れ上がった財布が嫌で小銭入れと札入れを別にしてみたので、気持ちはわかる。ただ、それなら(たとえ少量でも)ポケットに小銭を突っ込む姿が果たしてスマートと言えるのだろうか? 俺にはどうも解決策がピンと来ないんだよな。
例えば、小銭でパンパンに膨れ上がった財布がみっともないという話なら、店舗のレジではないが、自分の生活パターンを分析した上で、家を出る際の硬貨の構成を決めてしまうのはどうか、なんて最近は考えている。例えば「5円玉1枚、50円玉2枚、100円玉3枚、他は持ち運ばない」と決めて、自宅を出る際は、小銭の構成を絶対その枚数にしてから家を出るのである。余分な小銭はタンスの上の小皿にでも置いておけば良い。増えすぎて邪魔になった硬貨は、後でまとめて郵便局経由で口座に入金するか(郵便局には小銭を出し入れできるATMがあったはず)、どこかに寄付でもすれば良いだろう。
「小銭の構成を検討すること」や「財布の中の小銭を毎日セットすること」が面倒なら、「必ず小銭入れの中の小銭を空にした状態で家を出る!」と決めてしまうのもアリかもそれない。で、著者も言うように、できるだけSuicaEdyなどの電子マネーやクレジットカードで買い物をする。仕方なく現金で支払って小銭が発生した場合は、帰宅後また小銭を全部自宅に置いてきてしまう。で、自宅に置いている小銭が溜まってきたら、やはり郵便局経由で口座に入金するのである。