太田モアレ『鉄風』1〜4巻

鉄風 1 (アフタヌーンKC)  鉄風 2 (アフタヌーンKC)  鉄風(3) (アフタヌーンKC)  鉄風(4) (アフタヌーンKC)
一周した格闘漫画。
主人公は女子高生なのだが、スポーツの面白さに魅入られた快活で前向きな主人公ではない。分析的な理知タイプでもない。ボクシングに出会って更生するいじめっ子でも、その逆のいじめられっ子でもない。根性も前面に出ない。もちろん『幕張』のようにちっとも野球をしない野球部を描いた青春漫画でもない。彼女は自分に才能があることを自認して、かつ実際に素晴らしい才能を持っている。しかしそのことで自分自身はちっともアツくなれないのである。昔ちょっと空手をかじったときも簡単に強くなり、嫌になっている。ではなぜ主人公はもう一度格闘技を始めたか? 才能があって前向きで、今は自分よりも強い同世代の女の子を、ボコボコにするためである! 自分より強い・弱いとか、誰かに勝つ・負けるではなく、何かに前向きに熱中しているということそのものに、主人公は嫉妬し、そんな「前向きさ」をブチ壊したいのである。
確かに面白い漫画なのだけど、ここまでひねらなくては、現代人がスポーツや格闘技に燃え上がる設定にリアリティが生まれないのかと思うと、何だか凄いよな。表現のマンネリ化なのか、時代なのか。素直に自分の才能を喜べるキャラクターに、主人公はいつ生まれ変わるのか? あるいはこのままなのかもしれないけれど。