インキュベ日記

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福島聡『星屑ニーナ』1〜2巻

星屑ニーナ 1巻 (ビームコミックス)  星屑ニーナ 2巻 (ビームコミックス)
本作の主人公はロボットである。自分を拾ってくれた女の子も、一緒に遊んだ男の子も、あっという間に年老い、そして死んでしまう。しかしロボット「星屑」は、ちょっとトロそうなところはあるけれど、死なない。時間が止まり、登場人物が年を取らない漫画は数あれど、1話ごとに数年から数十年の時間が経過する本作のような漫画・アニメーションは少ない。そうした時間軸の中で描かれたエピソードは、嬉しいことも悲しいことも全て、時の彼方に過ぎ去り、埃をかぶってしまう。しかしロボットである星屑の記憶はデジタルで、彼のビジョンはいつまでも鮮明で……何とも言えない痛切な読後感を持った漫画である。
絵柄も、絵の門外漢である俺には巧く形容できないが、物凄く印象的である。福島聡は元々ダークでやや難解なストーリーの漫画を書くことが多く、(俺の勝手な印象だが)絵柄もややウェットで、かつ鋭利な、独特の凄みのあるそれであった。しかし本作ではストーリーに合わせてか、ポップで、ドライで、かつ幾分あたたかみのある、何とも形容しがたい魅力を発する絵柄になっている。
なお1巻の帯のキャッチコピーが本作の世界観を的確に表しており、個人的には秀逸。

神の速度で過ぎてゆく時間。
ヒトは死ぬがロボットは死なない。

キャッチコピーを読み返して思ったこと。本作の主人公は人間どころか、ロボットの星屑ですらないということ。本作は「時間の圧倒性」を描写した、数少ない漫画と言って良いのかもしれない。

余談

福島聡がもう10年も前に描いた『少年少女』は、本作とは異なりややウェットな叙情にまみれた傑作である。
少年少女 (1巻) (Beam comix)  少年少女 (2巻) (Beam comix)  少年少女 (3巻) (Beam comix)  少年少女 (4巻) (Beam comix)