- 作者: 長谷川櫂
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2009/12/16
- メディア: 新書
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これは本屋でたまたま見かけたもので、「1億人の」と銘打っているだけあって、まあオーソドックスなものなのだろう。
俳句の「五七五」「季語」「切れ(切れ字)」の大原則はもちろん説明しているが、それは学校でも当然のごとく習っており、さすがに知らない人は少ないであろう。
本書において多くのページを割いて説明しているのは、俳句には「一物仕立て」と「取り合わせ」がある、というかこの2つしかない、ということである。一物仕立ては基本的にひとつの物事を取り上げており、その取り上げたものの面白さで勝負する俳句であり、一方、取り合わせとは、ふたつ(以上)の物事を取り上げ、その組み合わせの面白さで勝負する俳句である。一物仕立ての場合は原則的に句中に切れがなく、取り合わせはそれぞれの物事の間に句中の切れがあるのが原則だが、一物仕立てにも取り合わせにも変型がある。すなわち(意味上は切れていないのだが)俳句の形式上は切れている一物仕立ての句や、(意味上は切れているのだが)切れている箇所に動詞の連体形が使われて形式上は切れていないようにも見える取り合わせの句が存在する、ということである。
学生時代は単純に「切れ字」や「後続と繋がらない名詞」があると「区切れあり」としていたが、その辺りはなかなか複雑なようだ。
なお、上記の一物仕立てのように意味上ひとつながりの場合は「区切れなし」と学校では習ったと思うのだが、本書は俳句の前と後にも明確な区切り線を入れ、「区切れなし」ではなく「句中の区切れなし」と表現していた。確かに俳句の始まりと終わりでは「切れ」ているように思う。非常に些細なことなのだが、俳句の始まりと終わりに区切り線を入れると、グッと俳句が浮かび上がってくる。