宮島未奈『成瀬は天下を取りにいく』

本屋大賞を受賞した本らしい。

何となくキャッチーな感じがして、手に取ったが、なるほど。

読んだ感想を一言で書くと「日常系ミステリからミステリ要素を抜いた作品」って感じ。

こう書くとつまらなさそうなのだが、必ずしもつまらないというわけではなく、むしろ何となく面白い気もする。

主人公の成瀬は200歳まで生きると公言し、例えばM-1に出てみたり、例えば高校入学時に頭を丸坊主にして「本当に1ヶ月1センチ伸びるのか」を確かめようとしてみたり、例えば閉店する西武大津店に夏休みの間は毎日通ってみたり、例えば『ちはやふる』を読んで高校の部活をかるた部にして全国大会での活躍を目指してみたりする。ブッ飛んでいるというほどではないものの他ではあまり見かけないタイプの魅力的なキャラがいて、大きいとも小さいとも言えないものの他ではあまり見かけないタイプの青春の起伏があり、そこはかとないユーモアがある。わたしは、米澤穂信の古典部シリーズや小市民シリーズを読んでいるような感覚を抱いた。ミステリ要素がない日常系ミステリというのは、つまりそういうことだ。

個人的には面白いと思ったので、次作の『成瀬は信じた道をいく』も買ってみた。