高浜寛『ニュクスの角灯』2巻

ニュクスの角灯  (2)

ニュクスの角灯 (2)

わたしが今、最も楽しみにしている漫画のひとつである。

まあ「最も楽しみにしている漫画」自体がそこそこあるのだが、本作はその中でも白眉と言って良いだろう。

海外貿易で利益を得る商人が多く現れ始めた明治初期の長崎を舞台に、変わり者の店主がいる「蛮」という道具屋で働くことになった(一見して何の取り柄もない)大人しい少女・美世が、不思議な魅力を持つ人々との付き合いや、店主がパリ万博で仕入れてきた最先端の品々(ミルクチョコレート、ミシン、ドレス、幻灯機……)に触れ、人間的成長を果たす……といったアウトライン。明治・大正時代の日本文化と西欧文化の格好良い混じり具合など、本作の中には、とにかく何とも言えない高揚感がある。時代も要の東西も全く違うんだけど、森薫『エマ』の番外編で、エマの先生(ケリー)が夫と共にロンドン万国博覧会に行って世界の広さと美しさに圧倒されるエピソードがあるが、それを読んでいる時の気持ちに似ている。

さて2巻では、謎めいた道具屋店主への恋心のようなものや失恋のようなものも出てきて、物語がまた転がり始めたような気もする。続きが楽しみ……ということで、ふと検索すると3巻が発売済みだった。最近はAmazon中心であまり本屋に行っていないから、楽しみにしている本を発売日に買っていないことが増えたなあ。