ルイス・ダートネル『この世界が消えたあとの科学文明のつくりかた』

この世界が消えたあとの 科学文明のつくりかた

この世界が消えたあとの 科学文明のつくりかた

文明が滅びたあと、いかにして生き残り、科学文明を再興していくのかについて説明した本。視点として面白いのは、「文明が滅びたあと」という時に、ジャングルやサバンナのど真ん中に人間が放り出された状態を想定して「いない」ということである。何らかの理由で人類の大半とほぼ全ての文明的インフラは称しているが、その残滓がある。いかにして、その残滓を使って生き残り、文明を再興するかにスコープが当てられている。

例えば、文明崩壊後に最優先で行わなければならないのは、水の確保。塩素消毒された水道水を(浴槽やビニール袋などを使って)できるだけ大量に確保するのは当然のこと。次に行うべきは、雨水や水たまりの水など、消毒されていない水をいかに飲用に耐え得る清潔な水にするかである。最も手っ取り早いのは煮沸消毒であるが、燃料は極めて貴重になることが想定されるため、その方法を著者は推奨しない。その代わりに、2つの方法を提示する。ひとつは、不純物を取り除くための濾過装置の作成、そしてもうひとつは、廃墟となった民家の台所の下やスーパーに残っているであろう漂白剤を使った「消毒」である。少量でも人間に甚大な危害を与えるものが入っていないかを確認の上、漂白剤を数滴、水の中に垂らす。もちろん数滴程度に希釈すれば、よほど毒性の高い原材料が含まれない限り、飲用に耐え得るだろう。

もうひとつ、食料の確保……こちらも、いきなり農耕や酪農や漁業をゼロから立ち上げるわけではない。まずはスーパーに駆け込んで缶詰や瓶詰めをゲットすることが、文明崩壊後、当面の生活において必要なことである。

その他にも、種子の入手方法(世界には核爆発にも耐え得る、種子を保存した設備がある)、紡績方法、金属やガラス・コンクリートなどの作成方法……などなど、文明の残滓を上手く使った、様々な観点からの文明の再興方法が述べられている。

なおAmazonでは、翻訳が読みづらいという評価も散見されたが、個人的には読みづらさはあまり感じなかった。たしかに「淡々としているな」とは思ったが、マニュアルや実用書のような訳文になるよう、あえてこんな文体にしたのではないかと好意的に判断している。