- 作者: 蛭子能収
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2015/07/11
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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買ってみると、蛭子能収は、そもそも人生相談なんて嫌なのだが、マネージャーが仕事を持ってきて、自分は仕事を断らない主義なので仕方なく仕事を受けた。しかも適当に書いたら怒られるので一生懸命考えて書いた……といった正直過ぎるカミングアウトが「はじめに」で書かれていて好感を持った。肝心の人生相談も、なかなか面白い。
例えば、「中2の娘は、勉強をせず「漫画家になる」と夢ばかり語っています。受験もあるので、気持ちを入れ替えてほしいし、 私たち夫婦としては、もう少し堅実に生きてほしいし、このままではろくな人にならない気がして……」という相談に対する蛭子能収の回答が以下である。
これは絶対、娘さんの思いを尊重してあげるべきですよ。
漫画家になれるかはわからない。挫折することもあるかもしれない。
でも、その経験も、いつかは役に立つはずです。
なぜ、子どもが将来の夢を見ることを止めるんですかね。
夢を持つことは大事です。それに将来◯◯になりたいと思っていれば、
簡単になれるとオレは思っているのです。
ただし、「どうしてもなりたい」と強く思わない人は絶対に無理。
正直、オレも漫画家になっても、最初は食べられませんでした。
そこで、ちり紙交換やダスキンの営業をしていましたけど、
漫画を描こうと、強く思い続けていましたから。
本気でなろうと思えば、50%か60%ぐらいの確率でなれると思いますよ。
ただ、オレは全然勉強をしないで漫画家になったことを後悔しています。
知識がないから、クイズ番組でまったく答えられない。
とても恥ずかしいんですよ。
だから、「勉強だけはしたほうがいい」と娘さんに言いたいですね。
それにしても「このままではろくな人にならない気がする」って……
あなたこそ、ろくな大人じゃないですよ。
子供が夢を
持つことの何が悪いの?
率直に言うと、このレベルの回答ばかりではない。大体がもっと間の抜けた回答や、気のない回答である。しかしこれは、なかなか鋭く、あたたかみのある回答だと思った。他にも「小説の一節かよ」と思うほど叙情的な回答もあるし、ところどころ、意外なほどレベルが高い本である。
余談
「なぜ、子どもが将来の夢を見ることを止めるんですかね」という箇所は、雑誌掲載時は「なぜ、子どもが将来の夢を見ることを止めるんですかね。公務員だからかな」と書かれていた。また「それにしても『このままではろくな人にならない気がする』って……」という箇所は、雑誌掲載時は「それにしても『このままではろくな人にならない気がする』って頭が固いですね」と書かれていた。多方面からの反響を受けた修正や、文章の推敲をした結果より穏当な表現に改められたのだろう。こう見ると、全体的に雑誌掲載時の方が(文章はこなれていないけれども)より生々しく、より毒が強い気がする。