2年ほど前の「エロ漫画たくさん」の続き。
私はほぼ20年来、団鬼六と山本直樹という2人の御大をエロの最高峰と崇めておりますが、団鬼六は鬼籍に入り、山本直樹は非エロ漫画『レッド』の執筆に忙しいため、どちらも新刊が拝めません。よって、衰え知らずな私のリビドーと上手く付き合うために最近ちょくちょく見るようになったエロ漫画の中から面白かったものを紹介する次第。
前回は25冊ほど紹介したので、次は30冊。ただし買い過ぎだろというか、最近やや漫画でのエロ表現自体に飽きてきたふしがあるので、「エロ漫画たくさん3」は書かれないかもしれない。
木静謙二『こんなに優しくされたの』
パッと見、やや写実的な凛とした表情の絵柄だが、おじさん小説の挿絵とは全く違う。近年のコケティッシュな路線を昇華・ミックスした感じ。体つきも現実離れした豊満系を以前は描いていたようだが、最近はややリアルな豊満寄り。これまで観た絵の中でも突出してエロいと思う。
ストーリーや設定もなかなか凝っていて、それがめぐりめぐって「女将が妄想して終わり」とか「古いAVを観て終わり」みたいなトリッキーな話もあるけど、それがまた巧い。同じ展開しか描けないと必ずと言って良いほど飽きられるんだけど、この作者にその心配は無縁。早く次のコミックスが出ないかな。
なお、作者のブログを覗いてみたら、本作は実写AVとアニメーションにもなっているらしい。確かに話作りが巧いので、そういうアプローチもありかも。色々やってんなー。
胃之上奇嘉郎『奉仕委員のおしごと』
もう10年以上前の『NO MERCY』という作品では、けっこうサブカル寄りの雰囲気で、その後はアニメのキャラデザや一般漫画を描いていたようだが、最近またエロ漫画を描いているらしい。で、最近12年ぶりに新刊を発売。昔から巧いなーと思っていたが、見事に流行を取り入れて、もう描写の緻密さもエロのレベルも物凄いことになっている。
大推薦本。
こんちき『私えっちですよ?』
短編集だが、設定がバラエティに富んでいる。エロ要素の入った文学を手に取って耳年増になった女子生徒が主人公とか、その女子生徒に良いように誘惑された新任男子教諭とか、さらにその女子生徒にアブノーマルな形で性を目覚めさせられたクラスメートとか。
サブスカ『えあえっち!』
この作者は、SF(すこし・ふしぎ)っぽい設定のエロ漫画ばかり描いているようで、デビュー作『ボディーランゲージ』は他人の考えていることが相手の顔や体に「文字」として読み取れるようになった男が主人公で、『性少女マギカ』は男性を意のままに絶頂に導く能力を得た女が主人公だった。
で、本作は、存在感が無さ過ぎて何をしても相手から注目されなくなった(いわば透明人間化した)男が主人公で、クラスメートにイケナイことをしまくるという設定。話も面白いんだが、この作者はデビュー作と比べて絵がけっこう上達しているなあ。
東山翔『Nymphodelic』
いわゆるロリ。こういう嗜好にはあまり関心がありませんが、それでも最高傑作と言って良いかなと思う。とにかくエロいし、絵や話作りのレベルも高い。ただしこの作者は本作を描いて満足したのか、一般紙で百合漫画やストレッチ漫画を描いている模様。ストレッチ漫画て。
新堂エル『晒し愛』『TSF物語』『新堂エルの文化人類学』『純愛イレギュラーズ』
いわゆる「アヘ顔」や「腹ボテ」といった記号的な描写を武器にのし上がった漫画家で、アブノーマルな描写やグロい描写も多め。ただ、世の中には、殺人・監禁陵辱・人体破壊といったスナッフポルノ顔負けの描写を喜々として描き続けている真性の○○漫画家もいるので、それに比べたら「商売」を前提とした描写かなーと思う。
なお、元々この漫画家はニューヨークで生まれ育ったアメリカ人。
ReDrop『ナツコイ』『乙女ドロップス』『ヘンカノ』『ヒメパコ』
原作担当と作画担当のコンビらしい。ゆでたまごと同じ形式。この漫画家もとにかく巧くてエロい。しかも初期作品から完成度が高かったのに、さらに巧くなっている。ただ、やや話も絵もパターン化のきらいがあるかも。いっそのこと、原作担当と作画担当をスイッチすれば良いんじゃなかろうか!(適当)
kanbe『いじりもん』、すがいし『たべざかり』、Hamao『スイーツスウェット』『きらきら』、mogg『肉体コミュニケーション』、もず『ベビーフェイスぐらまぁ』、よしろん『トラワレBOX』、六画八十助『せっくすのしくみ』、もんぷち『ハミにく×ハメにく』、hisashi『ポルノスイッチ』、『小悪魔カノジョ』『少女のトゲ』
スイーツスウェット
勝手に新人類と呼びたい。
ここ数年で初単行本を出した人たちが大半で、しかもワニマガジンが大半だが、どの漫画家も15年〜20年前と比べたら圧倒的に絵が巧い。私が高校生の頃は遊人が神様だったわけだが、はっきり言ってエロ描写のレベルでは数段劣る。
しかも、どれもコケティッシュと萠えを両立させた表情&肉感的な体形&直接的かつハードな描写……と、多かれ少なかれ似たアプローチである。おそらく「流行り」というものがあるんだろうなー。いずれにせよ、エロ漫画家業界全体の画力や話作りの能力がすんごく上がったなぁと思わせる。90年代は、こうは行かなかった。こんな直接的な描写を本屋でサクッと読めたら、団鬼六や山本直樹は手に取らなかったかもしれない。
なお、師走の翁や月野定規みたいに「死ぬまでエロで行きます」みたいな感じよりは、一般紙の漫画や一般アニメのキャラデザに普通に移って活躍しそうな方達という点でも共通(私が知らないだけで、もう移っているかもしれない)。でも否定的な意見ではないです。作者が漫画家としてずっと活躍できるのが、読者的にも(新刊が拝めるという意味で)イチバン良い。
なお『スイーツスウェット』はAmazonでの取り扱いが中止されたようなのでGoogleの検索結果を表示、『ポルノスイッチ』も電子書籍版しか表示されないのでそちらを。