重松清『定年ゴジラ』

定年ゴジラ (講談社文庫)

定年ゴジラ (講談社文庫)

大手銀行でバリバリ働いたのも今は昔、年老いたニュータウンで毎日することもなく定年後の生活を送る「山崎さん」は、毎日の散歩だけがさしあたりの予定である。しかし「山崎さん」にも、散歩仲間ができた――といったプロローグだろうか。
いや、全くスゲーですよ重松清。人情と無縁にも思えるニュータウンでも、人と人が触れあえば、それはもう人情なしでは語れないのである。最近はデビュー作から時系列で重松清の本を読んでいるが、いよいよ上質のストーリーテラーになってきた。定年後の生活なんてほとんど考えたことはなかったが、本書を読んで、色々と考えさせられた。まだ20代なのだから考えろと言われても難しい話ではあるのだが、定年後は定年後なりの悩みや難しさや楽しさや趣があるようだ。
ちなみに『定年ゴジラ』という書名の由来には、なかなか味わい深いエピソードがある。ぜひ実際に読んで確認してみてほしい。