吉原基貴+綱本将也『U-31』1巻

U-31(1) (モーニング KC)

U-31(1) (モーニング KC)

かつてはトップ下でアトランタ五輪代表にも選ばれ、将来を期待されたスター選手だった主人公。人気のない地方クラブから、東京の人気クラブに移籍。しかし、いつの間にか代表にも呼ばれなくなり、ポジションも「チームのために」と要求されるプレーをソツなくこなすうち、トップ下から右サイド・ボランチへと下がっていった。そんな中、所属チームを戦力外となり、昔ゴタゴタを繰り広げた挙句に出て行った地方クラブに、客寄せパンダとして舞い戻る――といったストーリー。
タイトルの「U-31(アンダー31)」は、「U-21」や「U-17」が元ネタの、主人公の後輩が影で主人公のことを揶揄した言葉である。年齢と体力の問題は、スポーツ選手には非常に重要なファクターであるから、なかなか深いタイトルであろう。主人公は現在27歳。スポーツ選手の27歳と言えば、肉体的にも技術的にもピークの時期に突入した選手が多いのかもしれない。また同時に、「もう27歳」と「まだ27歳」を行き来する微妙な年齢であることも、同世代として(たとえサッカー選手でなくとも)容易に推察できる。主人公は、周囲に流され、元代表の肩書きにすがり、不摂生な毎日を続けた結果、知名度だけはあるものの、プレーにキレと輝きを失ってしまった27歳に辿り着いた。しかし、客寄せパンダ覚悟で古巣に戻ることを決めた主人公は、何年かぶりにサッカーと真剣に向き合い、自らの輝きを取り戻すことも決意するのである。
本書のテーマは「色褪せてしまった輝きを取り戻せるか?」だと思う。
地味だが、リサーチも行き届いた、非常に面白いサッカー漫画である。