小田ひで次『夢の空地』

夢の空地

夢の空地

本書は何と日・仏・英・西・伊・蘭の6ヶ国語で同時刊行とのこと。そのため単行本は左開き(一般的な漫画と逆)で、文字も横書き。慣れないと違和感はあるけれど、逆に言うと慣れたら問題なし。そういう作品なのだと思えば良い。
本書は『クーの世界』という(これまた傑作の)漫画の続編なのだが、何しろ『クーの世界』が手に入らないので、かなり昔のうっすらとした記憶しかない。ヒロインの少女は『クーの世界』では小学生か中学生なのだが、本書では22歳になっており、しかも不倫中。思えば遠くへ来たもんだ――と呟いてしまいそうな変化である。まあ10年も経てばこれくらいは変わるのかもね。
まあ本書だけでも作品として充分に楽しめるけれど、やはり『クーの世界』と一緒に読んでみたかった、というのが正直なところ。講談社は「6ヶ国語で同時発売」というまたとない大きなプロジェクトの恩恵を、みすみす逃していると思う。本書の横で『クーの世界』を一緒に平積みするくらいのことは、やって欲しい。いっそのこと本書を出した飛鳥新社が復刊のような形で取り扱っても良かった。