村上春樹編訳『バースデイ・ストーリーズ』

バースデイ・ストーリーズ (村上春樹翻訳ライブラリー)

バースデイ・ストーリーズ (村上春樹翻訳ライブラリー)

「村上春樹 翻訳ライブラリー」というものの刊行が始まっている。小説家きっての翻訳量を誇る村上春樹だからこそ可能な企画であろう。まあ何にせよ、新書サイズで読めるのは良いことだ。
その「村上春樹 翻訳ライブラリー」の第一弾として、本書『バースデイ・ストーリーズ』がある。誕生日にまつわる、ここ10年〜20年ほどの新しい作品を取り上げているのだが、村上春樹の指摘を待つまでもなく、確かに「誕生日」という言葉のイメージに似つかわしくない重たい話が多く収録されている。俺としては、もっとハッピーな話が読みたいと思ったのだけれど、何もひねらず「誕生日」と「ハッピー」を結びつけるのは、いささか安直に過ぎる発想なのかもしれない。
本書は13の物語が収録されており、その1つは、翻訳ではなく、村上春樹の短編である。こういう趣向もまた、なかなか味があって良いのではなかろうか。