浦沢直樹+工藤かずや『パイナップルARMY[文庫版]』5巻

パイナップルARMY (Operation 5) (小学館文庫)

パイナップルARMY (Operation 5) (小学館文庫)

3話構成の「キング・オブ・ザ・ロード」が圧倒的に面白い。ロンドン警視庁(通称スコットランドヤード)に、実に勤務生活の35年を、ロンドンで最も雑多な街・ソーホーに捧げる警官がいる。一時期は致命的なほど暴力と麻薬に汚染されたソーホーの街を、ピストルも持たず、あくまで警棒と体ひとつで、犯罪の撲滅に命を捧げた。ソーホーの住民に「ソーホーの主であり、秩序であり、良心である」とまで言わしめる男である。彼は最後まで忠実に職務を全うし、息子とのんびり過ごすつもりだった。しかし彼は、警察組織の利益や体面のために、一人の人間の命が危うくなっていることを知る。彼は定年を明後日に迎えなお正義を貫くため、たった一人で一流の殺し屋5人と戦う決意をするのである。そして主人公・ジェド豪士は、あくまでも秘密裏に、警官の命を守り、正義を守る手助けをする羽目になる――というアウトラインである。浦沢直樹の構成力の凄まじさを堪能できて、泣ける。