浦沢直樹+工藤かずや『パイナップルARMY[文庫版]』6巻

パイナップルARMY (Operation 6) (小学館文庫)

パイナップルARMY (Operation 6) (小学館文庫)

本作は、基本的には一話完結モノの話が多いのだけれど、全体を通して「対テロネットワークとの対決」という物語構造がある。凄腕の傭兵としても、戦闘インストラクターとしても、爆破物やランチャーのスペシャリストとしても、世界的に顔の売れている主人公・ジェド豪士だが、実はジェド豪士以外にも、傭兵やテロリストたちの間で話題になっている日本人がいる。その日本人は顔も名前も経歴も一切表に出さず、ほとんど情報はない。しかし凄まじい経歴と能力を持ち、東側諸国のテロリストの参謀として、また新しいテロリストネットワーク勢力の中心として暗躍しているらしい。そして実は、その日本人のテロの企てを、何度か豪士は阻んでいる。そのことで豪士は日本人テロリストの恨みを買い、豪士の命に賞金を賭けられてしまい、東側のテロリストに命を狙われるようになる――という設定だ。
今までは、ジェド豪士が様々な依頼を受けながら途切れ途切れにストーリーが進展していたが、最終巻となる本巻で、ついに豪士は日本人テロリストの尻尾を掴む。しかし自体は思った以上にシビアで、下手をすればヨーロッパ壊滅。豪士は、自分のネットワークをフルに使い、ベストメンバーで日本人テロリストの野望を阻止するべく動き出す。西側−東側の冷戦構造がリアルに語られていることには「古さ」を感じないでもないが、「異なる体制や思想を持った集団によるテロネットワーク」という概念自体は、まさに今こそリアルに感じられる設定だ。80年代と2000年代という時系列を考慮に入れても、面白い読み方ができるのではなかろうか。