奥本大三郎『ファーブル昆虫記1 ふしぎなスカラベ』

ファーブル昆虫記〈1〉ふしぎなスカラベ (集英社文庫)

ファーブル昆虫記〈1〉ふしぎなスカラベ (集英社文庫)

集英社から順次、奥本大三郎による『ファーブル昆虫記』の完訳版が出版されている。俺は小学生の頃『ファーブル昆虫記』や『シートン動物記』を貪り読んでいたこともあり、かなり気になっていたのだが、新宿のジュンク堂で、完訳版の隣に本書が平積みされていた。「文庫版も同時発売していたのか……」と購入したら、実は10年ほど前に出版された文庫だった。ジュンク堂よ、売り方が上手いねえ。感心した。
ところで本書はジュニア版であり、忠実な訳というよりは、奥本大三郎が『ファーブル昆虫記』の内容を(注釈や奥本大三郎の感想を加えつつ)細かく説明しながら、ファーブルの業績や考え方を紹介する――という構成だ。「ファーブル先生は○○だと思ったのです」といった文体はいかにもジュニア版的だが、内容は非常に充実しており、大人が読んでも充分に楽しめる。かなり面白いので、他の本屋でも完訳版の『ファーブル昆虫記』と一緒に並べた方が絶対に良いね。
全6巻となるジュニア版の第1巻は、スカラベを初めとした「ふんころがし」の仲間と、ツチハンミョウの仲間を取り上げている。「虫の生態がここまで面白いとは!」という感じで、子どもの頃の印象とはまた違った楽しみ方がある。スカラベ・サクレの研究は、ファーブル先生の中でも特に有名なものであり、必読であろう。