『NEON GENESIS EVANGELION vol.01』

NEON GENESIS EVANGELION vol.01 [DVD]

NEON GENESIS EVANGELION vol.01 [DVD]

TVシリーズで大人気を博した『新世紀エヴァンゲリオン(通称エヴァ)』のDVD版。初めてエヴァを知ったのは、忘れもしない、高校2年生のスキー合宿(まあ修学旅行みたいなもの)のときだ。何とクラスメートの大半が夕方6時台のアニメにかぶりついていたのである。それがエヴァだった。そのときの俺はアニメなど全く観ない時期だった。主に観ていたのは深夜のB級バラエティと新日本プロレスWCW(アメプロ)とドキュメンタリーであり、主に読んでいたのはマガジンと全盛期のヤングサンデーである。だから「みんなアニメ好きだなあ」と思った程度だったが、連載終盤の迷走がさらに社会的なブームを呼び起こすにつれ、俺もエヴァのことは普通に見聞きするようになった。ただ、エヴァを通して視聴するのは今回が初めてである。前半は何度も観たことがあるけれど、作画やストーリーの乱れた後半は見たことがない。
DVD第1巻には以下のエピソードを収録している。

第壱話 使徒、襲来 ANGEL ATTACK
第弐話 見知らぬ、天井 THE BEAST
第参話 鳴らない、電話 A transfer
第四話 雨、逃げ出した後 Hedgehog's Dilemma

母親に死なれ父親に捨てられた主人公・碇シンジは、「先生」という人の元で、他人と深く関わり合いを持つこともなく、周りに流されて生きていた。しかし突然、特務機関ネルフの司令を務める父親・碇ゲンドウに呼び出され、エヴァに乗って使徒と戦うことになる。しかし主体性のない戦いに主体性のない自分。学校にもネルフにも馴染めるはずがなく、現実逃避気味に逃げ出す。しかし逃げ出す先などあるわけもなく、自分を気にかけてくれる(保護者役を引き受けてくれている)ネルフの作戦課長・葛城ミサトの元に戻るのだった――というアウトラインである。
数々の伏線や謎を撒き散らしている(そして大半が回収されていない)エヴァという作品において、アウトラインをまとめるのが果たして妥当なのかはよくわからないけれど、まあ導入部分くらいは別に構わないだろう。物語前半のエヴァは、いわゆる「流され型主人公」の王道的な物語構造である。しかしわかったふりや思い込みで、アッサリ納得して流されているわけではない。疑問を抱きながら流される。父親との関係や他人との関係に恐怖し、エヴァに乗ることに恐怖し、使徒に恐怖する。なぜ自分はエヴァに乗って使徒と戦わなければならないのか、なぜ自分は逃げ出せるのに(そして実際に逃げ出そうとしたこともあるのに)ここにいるのか。好感を持てるところが少ない主人公だが、わかったふりや思い込みでアッサリ納得しないところは、今までの主人公像には無い、特筆すべき点であろう。