黒木亮『アジアの隼(上)』

ベトナムで繰り広げられる国際金融小説……といっても、今回の主人公は上巻の大半を「事務所開設」のための接待や賄賂に費やしている。そうか、ベトナムでは「研修」や「セミナー」の形を通して賄賂を要求するのか、と感心しきりである。しかし、ここまでやらなきゃ事務所開設の許可が下りないのか。最後は俺も「ふざけんな!」と言いたくなる様な気持ちになるほどであり、とんでもない社会だ。でも、この種のことは発展途上国ではさほど珍しいものではないのかもしれないなあ。

それにしても作者は都銀、証券会社、商社のプロジェクトファイナンス分野と渡り歩いてきた人物であり、国際金融の経験がかなり豊富である。それだけに小説のディティールが細かくて面白い。