- 作者: 内田春菊,イワシタシゲユキ
- 出版社/メーカー: 双葉社
- 発売日: 2006/06/28
- メディア: コミック
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ここまで主人公に感情移入できない漫画は、新井英樹の『シュガー』とその続編『RIN』くらいであろうか。まあ新井英樹の書く漫画の主人公は、他作品もほとんど感情移入できないんだけどね。
そう言えば、イワシタシゲユキの書く他の漫画も(俺が読んだ漫画は全て)主人公にほとんど感情移入できない。まあ本書は内田春菊の原作モノなのだが、原作モノでない漫画の主人公に対しても感情移入はちょっと難しい。例えば今は絶版になっている『バドフライ』は、高校バドミントンを題材とした青春スポーツ漫画なんだが、「主人公が物凄い集中力の持ち主で、コンセントレーションが高まると汗っかきの主人公の汗が止まる」という微妙な設定で、好きな女の子のために集中力を発揮して強敵を倒し、気がつけばいつの間にか集中力だけでなく実力も付いている。そして今連載中の『女王様がいっぱい』の主人公は、元文学青年なのにエロ満載の過激な少女漫画誌の編集にさせられ、ぶつくさ言いながら同僚の編集者や担当の漫画家にエロいことをしたり妄想したりしている。
この2人の漫画家の凄いところは、ここまで主人公に感情移入できないのに、漫画は面白い、というところである。まあ厳密に言えば、新井英樹の描く主人公は「考えや行動がほとんど理解不能」なのに対して、イワシタシゲユキの描く(本書と『女王様がいっぱい』の)主人公は「考えや行動を理解はできるし、言い分もわからんでもないが、それはどうだろう!」というアプローチの違いがある。新井英樹は確実に天才だが、イワシタシゲユキも狙って感情移入できない主人公の造形としているのだろうか。はっきり言って、この「嫌悪感」と「ギリギリ理解できないというわけでもないような……」というバランスは絶妙だ。だとしたら、もっと注目されて良い漫画家だと思うんだけどね。特に『女王様がいっぱい』なんて、主人公の造形もさることながら、絵もキャッチーかつ巧くなっているし、エロが微妙に変態的で相当面白い。