カラスヤサトシ『おのぼり物語』

おのぼり物語 (バンブー・コミックス)

おのぼり物語 (バンブー・コミックス)

アフタヌーンで『カラスヤサトシ』という四コマを連載している作者の自伝的漫画。「的」としたのは、作品となった時点で、カラスヤサトシ本人とは切り離して読んでいただきたいという「あとがき」のコメントを受けてのものである。
作者は、当初は会社員と漫画家の二足のわらじを履いていたが、二足共(ほぼ)同時に失ってしまい、その後は悶々としたまま20代も終わりに近づき、心機一転東京に移る――というのが本書のアウトラインだろうか。東京に知り合いがおらず一人で悶々と漫画を描いていることをネタにしているのだが、俺も東京には「出稼ぎ」のつもりで出てきているし、また東京には知り合いがほとんどいないということもあり、なんだか他人事とは思えず、独特の親近感のある漫画である。
そもそも上京に至った経緯や上京中のエピソードは、あまりご機嫌なものではない。それでも作者なりのポジティブさ加減によるアイロニーとギャグの微妙なブレンド感が本書の魅力なのだが、後半では父親が病気になったエピソードが赤裸々に描かれている。しかし、これがもう本当にグッと来る話である。ギャグ漫画家の四コマだと馬鹿にしていたら泣いてまうで!