カラスヤサトシ『萌道』

萌道 (バンブー・コミックス)

萌道 (バンブー・コミックス)

アフタヌーンで『カラスヤサトシ』という四コマを連載している作者が、アキバ(秋葉原)や池袋などの萌えスポットを編集担当と探訪するという企画漫画。第1回目から「声萌え喫茶」という意味不明な萌えスポットを選択するあたり、かなりマニアックだ。他にも、店舗装飾やサービスの「素人臭さ」を見て、こうした萌えスポットの源流は「文化祭」にあると考えて、実際に高校の文化祭に行ってみる(そして全く萌えないヤンキーのブースに入ったりする)ような展開もあるなど、作者と編集が「萌えスポット」として取り上げる場所そのものが結構ユニークだ。
こうした萌えスポットを探訪して、客より店員の方が楽しんでいるな――と作者は何度も感じているのだが、これは面白い観点だなと思う。これらの萌えスポットやコミックマーケットに代表されるオタクスポットが盛況な理由は、「客だけが楽しい」のでも「店員だけが勝手に盛り上がっている」のでもなく、「客が楽しいことを店員が楽しみながら提供してくれる」という、いわば「一体感」がその理由のひとつだろう、ということを考えたからである。まあ俺はこうしたオタクスポットに行ったことがないから想像でしかないけれど、客と店員がこういう関係だと、やる側に無理がないんだよね。
まあ常識的なおじさんおばさんからすれば、萌えスポットの存在そのものに無理があるだろうけど!
でも、この構造というか考え方は、いわゆる「オタク」でないビジネスにも展開できる考え方ではないだろうか。例えば、ある種のブランドでは、素晴らしい商品・サービスを提供していること自体に店員が相当な誇りを持っていて、そのような店員から商品やサービスを受け取ることに客も誇りを感じる、というような関係があり得るからである。