インキュベ日記

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『NATIONAL GEOGRAPHIC (ナショナル ジオグラフィック) 日本版』2009年6月号

NATIONAL GEOGRAPHIC (ナショナル ジオグラフィック) 日本版 2009年 06月号 [雑誌]

NATIONAL GEOGRAPHIC (ナショナル ジオグラフィック) 日本版 2009年 06月号 [雑誌]

写真やドキュメンタリー記事によって地球の素顔を伝えるビジュアルマガジン。写真も記事も極めて質が高く、またとても充実している。個人的には「買う」に値する数少ない雑誌のひとつ。
今月号は「未知なる地底に挑む」という記事で、洞窟探検家の生態や洞窟探検の模様が載っていたのだが、これがもう衝撃だった。
まず「ナショジオらしい」2枚の写真を挨拶代わりに紹介。


この2枚の写真を見るだけで、野生など失われて久しい現代人のフロンティアスピリットが強引に目覚めさせられ、「何で俺は大航海時代や宇宙開拓時代に生まれていないんだ!」と叫びたくなるほどの破壊力を持っている。
続いて、地球の深淵に挑む模様が垣間見える2枚を紹介。


フィクションの洞窟の多くは単なる横穴だが、現実はそう甘くはない。洞窟の奥に進むということは、降りていくということである。高所恐怖症と低所恐怖症の方は問答無用で卒倒するかもしれない。地球のダイナミズムが存分に味わえる2枚である。
さて、最後に、俺が度胆を抜かれた2枚を紹介。


今月号で、個人的に最も衝撃を受けたのは、この最後の写真である。俺はこれを見た瞬間「自宅に居ながら地球の神秘を“体感”できる21世紀の人間で良かった」と心の底から安堵した。数十センチの幅しかない空洞の中を、文字通り岩盤に体を圧迫されながら、息を吐いた後に数センチずつ移動してまた息を吸う――想像するだけで閉所恐怖症の方はほとんど発狂してしまうかもしれない。俺は閉所恐怖症と言うほどではないが、想像したらリアルに怖くなった。この奥にドラゴンボールがあったら、俺はドラゴンボール集めを諦めてしまうだろうな。
彼ら「探検家」の生態が詳細にわかる文章も、少し引用しておきたい。

 うめき声を上げながら爪で引っかき、首をひねっては、青白い頭部を岩にこすりつける。“括約筋”とは、くねくねと延びる洞窟に出現した穴のことだ。大きさはバスケットボールほどしかない。その穴を、“ヤギ”の愛称で呼ばれるマリオン・スミスが通り抜けようとしているのだ。その姿はヨガでもしているかのようで、両腕は頭上に掲げられ、両脚を正座のように折りたたみ、腰を無理やりねじっている。
 スミスは、6人編成の洞窟探検チームのしんがりを務めていた。洞窟探検の達人らしい機敏さで、絶えず悪態をつきながら、最後には“括約筋”をくぐり抜けた。
 女性隊員のクリステン・ボボが、ヘッドランプの光が私の顔に当たらないように気を使いながら、ゆっくりと振り返って、こう言った。「マリオンはノッてくると、こうやって悪態をつくのよ」。38歳のボボ自身、洞窟探検のベテランでもある。
 スミスは穴を抜けて地面に下り立つと、「一度味わった苦しみは、必ずもう一度味わうことになるのさ」と、自嘲気味に言った。米国南部テネシー州の地表から数百メートル下の地底にいるため、地上に戻るには、再びここを通り抜けなければならないのだ。

この記事を読んで驚いたことがある。こうした人種は、何と穴が狭ければ狭いほどチャレンジスピリットが刺激され、そして岩盤に体を圧迫されればされるほど落ち着くのだそうだ。普通の人は、穴が狭ければ狭いほど通り抜けようとは思わないし、実際に通り抜けられない。そして岩盤に体を圧迫されればされるほど、肉体だけでなく精神が恐怖で押しつぶされるだろう。
何と言うか……探検家って才能だったんだな。natgeo.nikkeibp.co.jp