谷川流『涼宮ハルヒの憂鬱』

涼宮ハルヒの憂鬱 (角川スニーカー文庫)

涼宮ハルヒの憂鬱 (角川スニーカー文庫)

いわゆるライトノベルラノベ)については、俺はこれまで良い読者ではなかったのだが、以下の理由から、最近は食わず嫌いも良くないなと思い始めるようになった。

31歳にもなってアニメやライトノベルにハマって良いのかという思いもありながら、だって面白いんだから仕方ないじゃないか――ということで、ライトノベルも少しずつ読むことにした次第。
本シリーズは、昨今のライトノベルブームを牽引する代表格と言って良いが、プロローグからかなり突飛な展開を見せる。

東中出身、涼宮ハルヒ。ただの人間には興味ありません。この中に宇宙人、未来人、異世界人、超能力者がいたら、あたしのところに来なさい。以上。

ハルヒを読んだことのない人間でも知っている上記の文句に「ライトノベル臭」を感じてしまうのは仕方ないとしても、上記のように宣言したハルヒが、主人公と「世界を大いに盛り上げるための涼宮ハルヒの団(SOS団)」を立ち上げ、そのメンバーを適当に・かつ無理やり連れて来たところ、連れて来た3人が宇宙人・未来人・超能力者だった――ここまで来ると、そのトンデモぶりに呆れ返って本を閉じてしまう読者もいるかもしれない。しかし涼宮ハルヒという人物は、実は「どんな非常識なことでも思ったことを実現させる」という能力を無自覚に備えており、宇宙人・未来人・超能力者が集まったのは、それが故に起こってしまった「偶然ならぬ必然」なのである。そしてこの後、この特異な能力から数々の本格SFが展開される。
本書を読んで、ライトノベルを馬鹿にしちゃいかんよ、と思った。本シリーズの文体やキャラクターは思いっきり「ライトノベル」のだが、意外にも設定は硬派ではないかと思う。