古川日出男『ベルカ、吠えないのか?』

ベルカ、吠えないのか? (文春文庫)

ベルカ、吠えないのか? (文春文庫)

4頭のイヌたちを起源とする血の系譜が半世紀以上に渡って描写されている。愛だの殺しだのといったわかりやすいジャンル小説ではないため、さあ、どんな感想を書いたら良いだろう……という感じだが、一言で書くなら、とにかく「圧倒される小説」である。間違いなく読み手は選ぶが、この溢れ出すイメージの力は、ぜひ体感してみるべきである。
ところで、ネットで見つけたインタビューによると、古川日出男はガルシア=マルケスボルヘスといった南米文学を読んでいるようだ。この混沌とした感じや、物語の舞台が長期に渡る余り登場人物が代替わりするようなスケールの大きさは、いくつか読んだことのある南米文学を彷彿とさせるような気もする。古川日出男も南米文学も、しばしば「神話的」と評されるので、両者の類似性は、みんなけっこう感じているのかもしれない。