高橋源一郎『悪と戦う』

「悪」と戦う

「悪」と戦う

この人は真面目なんだか不真面目なんだかよくわからない、パロディ満載の「純文学」を多く書き残してきた。アラレちゃんやペンギン村は言うまでもなく、実在の人物までパロディに仕立て上げ、フザケているかと思ったら心臓を貫かれるような美しい描写をしたり、最後の最後で「えー」というような前衛的(?)な終わり方をしたり……要は、俺のような文学素人には掴みどころがなく、上手く理解できない作品も多い。ただ、初期作品――その中でも『さようなら、ギャングたち』は、(掴みどころがないながらも)とんでもなく美しく切ない小説である。
が、高橋源一郎からすると、不朽の名作『さようなら、ギャングたち』でやり残したことがひとつあるらしい。で、その「やり残したこと」をやったのが本書だそうだ。やり残したこととは果たして何だろう。純粋な「悪」との戦い? イノセントな意志の素晴らしさ? 世界との対峙の重要性? いずれにせよ、一筋縄じゃ行かないことは確かだ。