白井弓子『WOMBS(ウームズ)』5巻

WOMBS ウームズ 5 (IKKI COMIX)

WOMBS ウームズ 5 (IKKI COMIX)

元々は同人誌の作品だった『天顕祭』が文化庁メディア芸術祭マンガ部門を受賞して鮮烈デビューした作家の代表作。地球から遠く離れた星々にまで進出できるようになった人類が、旧世代と新世代——本作中では第一次移民と第二次移民で争うという(ガンダムなどでも見られる)世代闘争的なSFなのだが、主人公はこの戦いで劣勢を強いられている第一次移民のハストという国の女兵士である。

ハストの国力は周囲よりも劣っているのだが、ハストには女だけの特殊部隊・特別転送隊というものがある。ニーバスという現地生物(地球外生命体のようなものか)の体組織を自らの子宮に移植することで、ニーバスの特殊能力である空間転送能力を身につけた部隊である。現在の倫理では考えられない行いだが、だからこそハストでは独特の倫理観が形成されている。ハストの戦士はうら若き女性も活用していかなければならないし、ハストはこの転送隊のおかげで生存できていると言っても過言ではないため、何度も転送隊を経験した女性は「鉄の子宮」などと呼ばれ尊敬の対象である。しかしニーバスは、転送隊の子宮の中で、「成長」していく。もちろん産むことはできないし、それまでに処置するわけだが、人間ではない「異物」を子宮内で育てるという行為は精神面にも色々な影響があるようで、本作ならではの葛藤が描かれていく。

「女の武器」で戦う……と書くと通俗的な物語のように感じるが、実際には他に類例のない骨太でオリジナリティの高いアイデアだったと思う。最初から最後まで読者に媚びることなく、特に後半はやや難解さも見られたが、今後も読み返すべき問題作であろう。