河合克敏『とめはねっ! 鈴里高校書道部』2〜14巻

文化系クラブの中でも特に印象の薄い書道部を取り上げた青春部活漫画。

主人公が入学した鈴里高校*1 は、主人公の一学年上の先輩により設立された書道部がある。しかし部員が少なく廃部の危機。そこで先輩たちは、カナダ帰りの帰国子女で(日本語の読み書きはできるけれど)一度も習字をやったことのない主人公・大江縁を(たまたま着替えシーンを見てしまうというハプニングをネタに)脅して書道部に入部させる。また、オリンピック出場も夢ではない柔道部のヒロイン・望月結希を騙して(柔道部と掛け持ちで)書道部に入部させる。しかし脅されて&騙されて入部した個性的な2人は、嫌々やるわけではなくむしろ書道の魅力にハマり、のめり込んでいく……というのが縦軸のアウトラインだろうか。そこに各人の高校生らしい瑞々しい恋愛模様や人間関係が横軸として編み込まれていく。

先日1巻を読んでドハマりし、早速2〜14巻までを読んだのだが、とにかく書道というものがこんなに面白いものだったのかと驚くばかりである。本作で主人公や先輩たち・ライバルたちが書いた作品は、現役高校書道部生や書道経験者などから一般公募により集めたものである。つまり河合克敏が連載の合間を縫って書いたものではなく、それぞれがそれぞれの立場で真剣に書いた書である。作者は、漫画と書のコラボレーションを自賛していたが、それも確かに頷ける。たとえば若き書道家を主人公に据えた『ばらかもん』は、漫画としては面白いものの、主人公の「書」そのものに感動することはない。しかし本作では、「書」そのものに感動することがある。特にクライマックスである14巻において書の甲子園に出品した縁の作品……これなどは見た瞬間、涙が止まらなかった。もちろん純粋に作品に対する評価だけではなく、主人公の顧問や部活の先輩に感情移入した故の涙であろう。しかし涙には違いない。

なお作者の河合克敏は、デビュー作『帯をギュッとね!』と『モンキーターン』を週刊少年サンデーに、本作をヤングサンデー(後にビッグコミックスピリッツ)に連載した、典型的な小学館の申し子である。サンデーと言えば、高橋留美子・あだち充・ゆうきまさみなどによって築き上げられたラブコメ漫画・青春コメディ漫画というイメージが強いが、河合克敏もその意味でサンデー的と言えるだろう。非常に瑞々しく、主人公は生真面目なのだが全体的にはコメディタッチである。*2

最後に、河合克敏はけっこう遅筆傾向の作家らしい。次の連載がいつ始まるのかもよくわからない。どんな作品が始まるのか早くも待ち切れないのだが、しばらくは『帯をギュッとね!』『モンキーターン』『とめはねっ! 鈴里高校書道部』を繰り返し読むことにしよう。

*1:鈴里高校は硯/すずりの当て字なんだな。文字を書いて初めてわかった。

*2:ジャンプは「友情・努力・勝利」が有名で、マガジンは「ヤンキーとお色気」という感じだ。本能に忠実というかね。