ヤマシタトモコ『花井沢町公民館便り』3巻

花井沢町公民館便り(3) (アフタヌーンコミックス)

花井沢町公民館便り(3) (アフタヌーンコミックス)

「花井沢町」という町を舞台とした近未来SF漫画。

シェルター技術の開発事故に巻き込まれた結果、生き物だけを通さない「見えない膜」に町ごと覆われてしまっている。モノは移動できるが、中の人は外に出られず、外の人も中に入れない。だから中に閉じ込められた人は、配給や給付金を受けての生活、ネットを活用した物品購入、自分が外に出なくても良い経済活動はできる。しかし様々なインフラはだんだん破綻していくし、医者も「中」にいなくなれば積極的な治療は難しい。人口もせいぜい花井沢町という町ひとつ分なので、数十年後か、数百年後か、いずれ必ず滅びるだろうね……というなかなかどんよりと重い設定である。

その設定通りにずしんと重い話もあれば、それほど重さを感じない話もある。しかしいずれにせよ、それが「単なる連作集」ではなく、「意図的に時系列をシャッフルした連作集」なのだと否応なく気づかされる頃には、重い設定の話や、インフラに不自由する住人の話がどんどん増えてきて、この設定がボディーブローのように読み手にダメージを与えてくる。

最終話も……これはなあ。これしかない「終わり方」と言えばそうなんだろう。冷静に考えれば、本作の設定は、この最終話しか導くことはできないだろう。しかしわたしにとっては、あまりにも残酷すぎ、あまりにも寂しすぎたと思ったのも事実。