滝川廉治+陶延リュウ+沙村広明『無限の住人 〜幕末ノ章〜』1巻

あの『無限の住人』の公式続編!

……公式???

よく見るとクレジットも複雑だが、要するに原作が滝川廉治という小説家、漫画(作画じゃないんだ)が陶延リュウという新人漫画家、そして沙村広明は「協力」という位置づけらしい。協力て。

最近のマンガ業界は、意味不明なグッズ商売・無理筋な延命などではなく、スピンオフや、とっくに終わった作品を「続編」という形で商売するのが流行だ。その多くの場合、元々の漫画家ではなく、別の作家が実際に漫画を描くのである。そうすると、元の漫画家は「原案」だの「協力」だのでクレジットされて何もしないでも報酬を得られ、新人漫画家は世界観が与えられて、一定の知名度があるので、ファンが最初からついており、しかも本作だと原作までついており、要は「漫画制作」に専念できる。さらには、ファンは続編やスピンオフという形だが、好きな作品の続きが読める。

さて、冒頭やや皮肉めいて書いてしまったが、わたしは基本的にスピンオフや続編は「良いんじゃないの」という立場だ。もちろん酷い代物もあるんだが、つまらないものは読まなければ良いだけの話で、中には『今日からCITY HUNTER』や『からかい上手の(元)高木さん』のように、絵柄が元の漫画家に非常によく似ていて話も面白いものや、『ヴィジランテ』のようにオリジナルを超えちゃったんじゃないのというような大傑作漫画もある。要するに、作り手が元の作品の世界観を理解・リスペクトして、丁寧にモノを作れば良いわけである。

今日からCITY HUNTER 4巻 (ゼノンコミックス)

今日からCITY HUNTER 4巻 (ゼノンコミックス)

  • 作者:錦ソクラ
  • 発売日: 2019/06/20
  • メディア: Kindle版

その意味では、本作はお話作り・台詞回し・絵柄等々、非常に原作に寄せてきているなという気がする。さすがに絵柄については、沙村広明の初期の凄みは到底出せていないものの、近年の絵柄と比べると概ね遜色はない気もする。台詞回しや絵柄も同様で、読んでいて、少なくとも「ああ他人が作ってんだなー」というような違和感や白けのようなものは全然ない。

舞台は『無限の住人』オリジナルの舞台から80年後で、新撰組や坂本龍馬が登場する。なるほど、こうした混沌の時代と卍は合っているかもね。

続きが気になる。