機本伸司『神様のパズル』

神様のパズル (ハルキ文庫)

神様のパズル (ハルキ文庫)

文体は平易だが意外に本格的な設定のSF……という、俺が最近よく好んで読んでいるタイプの作品。
凡庸な大学生が、卒業のために天才女子大生(しかし飛び級なので年齢的には女子高生)と「宇宙を作れるか」というテーマで行動を共にするようになるというアウトライン。ありがちなのかそうでないのか正直よくわからないけれど、とりあえず突飛な設定ではある。そしてなかなか本格派の設定だ。しかし大学の授業の一環としてのディベートという場で宇宙創世が話されるため、文体の平易さも相まって、意外なほどに読みやすい。
天才女子の方はいわゆるツンデレを通り越して、ほとんどデレが存在しない。話し方はほとんど中年のおっさんで、人を信頼せず、だから自分への共感も求めない。感情移入や萌えを絶妙に拒否するヒロインなのだが、天才故に実存に関わる様々な葛藤を抱えており、物語後半になるとその苦悩が滲み出てくる。
これは面白い。