佐藤優『同志社大学神学部』

同志社大学神学部?私はいかに学び、考え、議論したか? (光文社新書)

同志社大学神学部?私はいかに学び、考え、議論したか? (光文社新書)

外務省のラスプーチンと呼ばれる異能の外交官だった佐藤優だが、この人の経歴は本当に面白いというか興味深いというか……彼は同志社大学神学部で学んでいるのである。神学部というのは元々「牧師」を育てるための学部と言っても良いが、佐藤優が入学する頃には「教会の推薦状」なども不要になり、キリスト教徒ではない者や牧師を目指しているわけではない者も一定数受け入れているようだ。

そう、佐藤優はキリスト教徒であり、神学者でもある。マルクス主義とキリスト教という一見すると相反する2つのイデオロギーに強く影響を受け、今の佐藤優があるのだが、彼の複雑にして深い人間性が大学でどう培われたのかがよくわかり、個人的には非常に面白い。

あと、『十五の春』を読んで、わたしは佐藤優が一貫してロシアに興味を持っていたのかと思っていたが、実はそうではなかった。彼はフロマートカという神学者を敬愛していることは既に知っていたが、そのために(ロシアではなく)チェコに留学してチェコ語やチェコの神学を学びたいと思っていたとは。ロシアの外交官という道筋は、希望通りどころか、むしろ希望が通らなかった結果として得られたものである。