重松清『四十回のまばたき』

四十回のまばたき (幻冬舎文庫)

四十回のまばたき (幻冬舎文庫)

事故で妻に先立たれた30歳手前の売れない翻訳家。その義妹は冬に「冬眠」する上に、方々で淫行を重ね、おまけに義兄である主人公とも淫行して(義兄が父親かどうかは明確ではないものの)妊娠。しかも妻は死ぬ直前に不貞をはたらいている。
感情に乏しい主人公といい、「冬眠する」という現実離れした設定といい、村上春樹の縮小再生産にすら失敗した小説――という印象を最初は持った。設定が紋切り型というか、設定が空回りしているというか、とにかく、よっぽど読了するのを諦めようと最初は思ったが、主人公が翻訳した小説の原作者が登場してから、面白くなった。粗野だが、不思議な魅力を持ったおっちゃんだった。
ただ、作品全体として見て、人に推薦したいかと言われたら、ノーだ。重松清なら迷わず他の作品を推薦したい。まあ、重松清を作家単位で追いかけようと思っている人以外は手を出す必要もないのかな、というのが俺の感想。