重松清『疾走(下)』

疾走 下 (角川文庫)

疾走 下 (角川文庫)

赤犬」の弟となった主人公は、中学校にで家でも地域でも居場所を失う。その中でも、少年はリゾート開発のための立ち退きを拒否する神父に受け容れられるのだが、少年は結局、東京へ向かうことを決意する。しかし故郷を出て、途中に立ち寄った大阪で、少年はまさに「地獄」と呼ぶべき経験に晒されるのである。暴力、セックス、悪意、祈り――全てが複雑に絡まり合う中、少年は「人とつながりたい」という思いを胸に文字通りの苛烈な人生を必死に疾走する。
今までの重松清とは違い、あたたかくてささやかな等身大の感動はない。けれど、激しく俺の何かを揺さぶる。上巻も下巻も必読。