伊坂幸太郎『グラスホッパー』

グラスホッパー

グラスホッパー

一介の学校教師だった鈴木は、名前とそぐわない非合法な会社「令嬢」の社長・寺原の息子に、妻を無責任に殺される。しかし権力のある寺原の息子は何の責任も問われない。復讐を決意した鈴木は身の上を隠して「令嬢」に入社するも、「令嬢」の社員に「オマエは復讐者だろう」と疑われ、「この非合法な会社で仲間として認められたいなら、自分と無関係な人間を目の前で人を殺してみせろ」と不条理な要求を突きつけられる。しかし、その時、復讐の対象者である寺原の息子が目の前で車に轢き殺される。それで「めでたしめでたし」となるなら話は早いが、当然それほど単純に終わるわけもなく、今度は復讐の対象であった寺原の息子を轢き殺した犯人を追いかける羽目になる――というプロローグ。
全編を通した主人公は鈴木だが、項立てごとに語り手が入れ替わりつつ物語が進展する。押し屋だの自殺屋だの殺し屋だのといった裏の世界の住人がそれぞれの思惑や葛藤を胸に跋扈する様は、なかなか面白い。