『機動警察パトレイバー the Movie』

機動警察パトレイバー 劇場版 [DVD]

機動警察パトレイバー 劇場版 [DVD]

ロボット技術を応用した歩行式の作業機械「レイバー」が実用化された10年後の近未来を舞台とした、警察アニメーション(実際は80年代から見た10年後が舞台なので、既に本作の時代設定を追い抜いており、近未来ではなくパラレルワールドと言った方が無難)。押井守の色が非常に強く出ており、『機動警察パトレイバー』の設定を借りているが、むしろ押井守作品といった趣が強い。絵柄も、顔の陰影などは特に「人狼かよ!」と言いたくなるほどに押井守チック。
驚くべきは、1989年公開にして、コンピュータウィルスによる脅威を描いていること。恐ろしいほどに時代先取的な作品だ。ウィンドウズ95の発表される5年以上前にOSの概念と脅威を認識し、作品に仕立て上げ、アニメーションの形で広く世に問うている。単なるオタクアニメの映画版……なんて思ったら打ちのめされます。2006年現在の今なお、コンピュータウィルスを扱ったポップメディアとしては出色の出来であろう。
個人的に面白かったのは、本作では、本来は第一主人公である泉野明が脇役と化していること。本作では(同じく主人降格ではありながらも泉野明と比べて目立つ存在ではなかった)篠原遊馬が主人公である。一大レイバーメーカーの社長の息子であるという設定を巧く使い、企業モノとしても深みが増した。