山本英夫『のぞき屋[文庫版]』3巻

のぞき屋 (3) (小学館文庫)

のぞき屋 (3) (小学館文庫)

3巻のメインは、失踪した校長先生の息子(高校生男子)捜索のエピソード。警察の補導や金銭的問題・宿泊場所等を考えると「17歳の高校生が八日も失踪するというのは意外と困難」とのことで、にもかかわらず1週間以上も失踪し続けられるのは、その息子が機転の利く人間で、しかも相当な覚悟を持って失踪している可能性が高いそうだ。しかし校長先生は自分の体面を危惧し、誰にも気づかれずに探してほしいと言う。親しい友人に聴いて回れるならともかく、その条件では引き受けられない――と一旦は断るものの、見(ケン)のワガママで、結局は引き受けることになる。で、この高校生男子、実は新宿二丁目で(自身はゲイではなくノンケなのだが)ゲイのウリ専をやって食い扶持を得ており、ノンケ好きのゲイオヤジと知り合って行動を共にする――という設定。
本巻では「親子愛」「同性愛」「異性愛」というモチーフを「クライアントの依頼によるのぞき」という視点で描写している。全く素晴らしい作品である。
また本巻では、見(ケン)の「のぞき」のフルサトである、アベックのぞき公園を訪れるミニエピソードも収録されている。見(ケン)の義眼の秘密に触れられており、個人的には非常に興味深いエピソードである。