佐々木俊尚『ネット未来地図』

ネット未来地図 ポスト・グーグル時代 20の論点 (文春新書)

ネット未来地図 ポスト・グーグル時代 20の論点 (文春新書)

インターネットに関する20の論点について解説している本。論点は以下。

  1. amazon アマゾンが日本のオンラインショッピングを制覇する
  2. Recommendation お勧め(レコメンデーション)とソーシャル(人間関係)が融合していく
  3. 行動ターゲティング 行動分析型広告は過熱し、ついには危うい局面へ
  4. 仮想通貨 電子マネーはリアル社会をバーチャルに引きずり込む
  5. Google グーグルvs.マイクロソフト 覇権争いの最終決着
  6. Platform 携帯電話キャリアは周辺ビジネスを食い荒らしていく
  7. Venture 日本のネットベンチャーの世代交代が加速する
  8. Monetize ウェブ2.0で本当に金を儲ける方法
  9. YouTube ユーチューブは「ネタ視聴」というパンドラの箱を開いた
  10. 動画 動画と広告をマッチングするビジネスの台頭
  11. TV 日本のテレビビジネスはまもなく崩壊する
  12. 番組ネット配信 NHKが通信と放送の壁をぶち壊す
  13. 雑誌 雑誌とインターネットはマジックミドルで戦う
  14. 新聞 新聞は非営利事業として生き残るしかない
  15. Second Life セカンドライフバブルの崩壊する時
  16. ネット下流 携帯電話インターネット層は新たな「下流」
  17. Twitter 「つながり」に純化するコミュニケーションの登場
  18. Respect 「リスペクト」が無料経済を収益化する
  19. リアル世界 検索テクノロジーが人々の暮らしを覆い尽くす
  20. Wikinomics 集合知ウィキノミクスが新たな産業を生み出す

論点1〜論点4が「ビジネスとインターネット」というカテゴリで、論点5〜論点8が「インターネット」というカテゴリ、論点9〜論点14が「メディアとインターネット」というカテゴリ、論点15〜論点18が「コミュニケーションとインターネット」というカテゴリ、論点19と論点20が「未来とインターネット」というカテゴリになっている。
もう目次だけで十分に面白い。個別論点では「?」と思う箇所もあるが、Amazonの「おすすめ」の凄さが初めてわかったし、マジックミドルという概念も初めて知った。それにTwitterがコミュニケーションの潮流上そこまで大きな意味を持っていたのかというのも驚きである。2007年現在のコミュニケーションの最先端は「ニコニコ動画」で決定のように思うが(既に古い?)、しかしコミュニケーションの極北は、ある意味Twitterかもしれない。2chで垣間見た、返事による深化を求めない一人語り的な要素が、ここではさらに先鋭化されている。
しかし本書はインターネットを論じているという性質上、もう書いた途端に凄まじい陳腐化の嵐からは逃れられない運命である。例えばウィキノミクスは確かに興味深い概念だと俺も思うが、日本で一般にウィキノミクスという言葉が知られ始めたのは、『ウィキノミクス』が発売された2007年6月である。そしてその原書である『Wikinomics』が欧米で発売されたのは2006年だ。ギークの間では、少なくとも1年前から知られていた言葉になるだろう。非常に面白いが、しかしだからこそ、急いで読むことを「おすすめ」する。俺も発売当初に読んだ方が良かった。