高橋佳哉+前田卓三+原伸之『人事報酬マネジメント』

人事報酬マネジメント―年俸制を超える新システム

人事報酬マネジメント―年俸制を超える新システム

ストックオプションが本書の最大のトピックだが、どうにも古い。本書は1997年発売だが、ストックオプションが商法改正により日本で全面解禁されたのも1997年。これからストックオプションが導入されるはずとか言っている時期なので、このあたりは正直2007年現在のストックオプションの問題を考える際には「歴史モノ」以上の意味合いはないと思う。導入にあたる第1章「世界の人事の大潮流」も同じ理由でイマイチ。
なので、中心的に読んだのは第3章「新しいインセンティブ報酬制度」かな。後半はストックオプションの話だが、前半の知識整理に役立てた。

本来の賞与の意味(会社の利益上昇に貢献したご褒美)は、税引前利益や税引後利益を会社・株主・従業員の三者で割る「利潤配分方式」が正論であるが、利益が出ないと賞与が出せないから、採用する企業は少ない。賞与の意味が基本給に近づいてしまった日本独特の運用の結果である。

もちろん上記の引用も1997年時点での現実で、もう業績連動型賞与は(マジョリティとまでは言わないまでも)導入事例はかなり増えてきている。しかし未だにボーナスが「生計費の補填」や「月例給の後払い」としての性格を持っている企業が大半を占めているだろう。ボーナスが利益配分であるという理屈は、多かれ少なかれ誰もがわかっているのだけれど、じゃあ会社や部門が儲かっていないからゼロで良いかと聞かれて「はい」と即答できる人は、日本には少ないだろう。一度「当たり前」に貰えたモノが貰えなくなるのはやっぱり辛いし、貰えないとなるとモチベーションも忠誠心も下がってしまう。難しい問題だ。