黒木亮『カラ売り屋』

カラ売り屋 (講談社BIZ)

カラ売り屋 (講談社BIZ)

金融マーケットで生きる「カラ売り屋」「村おこし屋」「エマージング屋」「再生屋」の4人にスポットライトを当てた短編集。黒木亮の場合、ある程度の長さを持った小説の方が面白いように思う。金融というものは、スキームが非常に複雑で、ステークホルダーも多く出てくるし、何しろ金が関わるのでネゴシエーションも大変である。そのダイナミズムを魅力的に描写するには、ある程度の文章量が必要だと俺は思う。
しかし本書がつまらないかと問われれば決してそんなことはなく、表題作「カラ売り屋」などは、かなり楽しめた。カラ売りは悪徳金融屋の代名詞のように思われているが、基本的には市場の歪み・株価の歪みに目をつけたビジネスという見方もできるんじゃなかろうか。つまりカラ売りという行為を好意的に解釈するならば、市場が効率的でなく、会社が株主に必要な情報を提供していないために株価が高止まりしているような場合に、カラ売りが効果的に儲けの手段になるのである。