高橋源一郎『ペンギン村に陽は落ちて』

ペンギン村に陽は落ちて (集英社文庫)

ペンギン村に陽は落ちて (集英社文庫)

『さようなら、ギャングたち』を読んだときは猛烈に震えた。何と形容して良いのか未だによくわからないけれど、とにかく感情が深く深く揺さぶられたのである。高橋源一郎の本は大半が絶版になっていたので、俺は取り付かれたように高橋源一郎の本を求めて古本屋めぐりをしたのだが、他の本は結局どれも見つからず、落胆したことをよく覚えている。本屋になければ図書館で借りろよという話だが、昔の俺は頑固なまでに「所有派」で、図書館を絶対に使わなかったのである。
それで結局、これまでは講談社文芸文庫のラインナップに入った『さようなら、ギャングたち』と『ジョン・レノン対火星人』しか読んだことはなかったけれど、いつの間にか『優雅で感傷的な日本野球』や『虹の彼方に(オーヴァー・ザ・レインボウ)』が復刊されていたことを最近知った。今は「図書館有効活用派」なので、早速『優雅で感傷的な日本野球』と『虹の彼方に(オーヴァー・ザ・レインボウ)』と『ペンギン村に陽は落ちて』と『ぼくがしまうま語をしゃべった頃』を予約。最初に手元に届いた本書から読んでみることにした。
前置きが長くなったが、久々の高橋源一郎はなかなか手強い。全編がパロディとメタファーで、文学的な素養のない俺には正直あまり理解できなかった。しかし表題作「ペンギン村に陽は落ちて」は良かった。登場人物が何のために、そして何を求めて必死になって足掻いているのか、最後まで理解できなかった。自分の読み方が正しいかどうかもイマイチ自信がない。しかし読みながら心が震え、切なさが溢れた。俺の読み方が正しかろうが間違っていようが、心が震えるなら、それは俺にとって大切な小説である。言い訳だが、それで十分だろう?