勝間和代『勝間和代の日本を変えよう』

勝間和代の日本を変えよう Lifehacking Japan

勝間和代の日本を変えよう Lifehacking Japan

4章の雨宮処凛との対談はかなり面白かった。勝間和代は相当に恵まれているようで、雨宮処凛の語る世界が全くわかっていないし、おそらく対談を経てもわかっていない。勝間和代は『勝間和代のインディペンデントな生き方 実践ガイド』の中で、女の年収600万円と男の年収1,000万円が上位10%ずつだから釣り合う的なことを書いていたが、それが(特にリカバリーの困難な日本社会では)男にも女にもどれだけ大変なことか、肌感覚で全くわかっていないから言えることである。
ただ、この点で勝間和代を批判したいわけではない。むしろ逆で、勝間和代は、自分が「ワーキングマザー」として苦労はしてきたが、それでも、自分が子どもの頃から能力的にも環境的にも経済的にも人並み以上に恵まれていたことを十分に自覚している。そしてその前提でアクションを起こし、実際に日本を少しずつ変えていっているのである。確かに、経済的に恵まれている人間が差別や格差を声高に語ると、どうしても「偽善」と罵られることは避けられない。しかし社会問題を解決しようとするならば、著者の言うように偽善になることを必要以上に恐れてはならないのである。同時に、偽悪や露悪になることも恐れてはならないとも思う。あと、全てを一度に解決することはできないのだから、やれることをやれるようにやる、という「効果」の視点は、もっと重要視されて良い。
なお勝間和代の具体的な活動について俺が知っているのは、経済格差の是正を目的とした印税寄付プログラムと、ワーキングマザーの支援やワーク・ライフ・バランスの実現を目的とした各種活動である。前者はChabo!(チャボ)、後者は色々あるが、有名なのは、内閣府男女共同参画局の「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)に関する専門調査会」の専門委員への就任だろう。どれも結構な効果を出しているようで、素直に凄いと思う。

ここから余談

ここからは余談だが、本書を読んで気になった点がある。勝間和代は、Chabo!(チャボ)で集めた金の使い道がスーダンやスリランカであることに対して、「なぜ国内ではなく国外なのか」と批判めいたことを言われる、というようなことを本書で語っている点である。
雨宮処凛と対談した結果として、日本のワーキングプアに対する問題意識が勝間和代の活動に反映されてほしいと思うのは読者としての自然な感情だが、俺は別に「国内で使え」と言いたいわけではない。それに上でも書いたが、全てを一度に解決することはできないのだから、やれることをやれるようにやる、という視点も重要である。
俺が気になっており、かつ著者に言いたいのは、そういう声があることを自覚しているなら、Chabo!(チャボ)のHPでその声にきちんと答えろ、ということである。
俺はChabo!(チャボ)のHPのFAQを見たのだが、「活動方針およびこれまでの活動実績」についてはJENを見ろ、「具体的な使い道ついては*1、その都度、世界情勢を鑑みながら、慎重に協議の上で決定させていただきます」と書かれているだけである。
そのためJENのHPに飛んだが、今度はHPが見づらく、それなりに熱心に探したのだが、Chabo!(チャボ)そのものの支援方針や収支内訳が一体どこに書かれているのか、よくわからない(ただし支援内容はそれなりに書かれている)。というかJENとChabo!(チャボ)の違いもよくわからない。Chabo!(チャボ)の寄付金はJENに流れていて、Chabo!(チャボ)イコールJENということ? またJEN全体としては、個別の活動内容紹介や年次報告は詳しいが、世界には問題がたくさんあるわけで、具体的にどういう「協議」の上でたくさんある世界的な問題の中からその支援先が決定されたのか、という点がわからない。そしてそもそもの疑問である「なぜ国内ではなく国外なのか」という点に対する回答も、どこに書かれているのか結局よくわからずじまいなのである。
俺はジョン・ウッド『マイクロソフトでは出会えなかった天職』に感銘を受けて以来、自分の財力でもできて、自分のメリットにも繋がる、端的に言えばあまり大げさでない社会貢献の在り方を自分なりに模索*2してきた。例えば、小銭が余っているときはコンビニの募金箱に入れるとか、金の使い道がイメージしやすい街頭募金には必ず金を入れるとか、家で余っている物品の寄付を行うとか……といった感じであろうか。最近は服が余っているので、中古衣料の寄付をしようと準備している。またChabo!(チャボ)のような本については、その運動に賛同し、何タイトルか、同じ本を会社用やプレゼント用に2冊買ったりしてみた。
しかし、そういうことをやったが故に、勝間和代のコメントには余計に「もやもや感」を強く感じるのである。うーん……この「もやもや感」も、まあやらないよりはやった方が良い、という1点で、Chabo!(チャボ)の本の購入者は納得するしかないのかなあ。それとも俺が神経質になりすぎているだけ? でもホワイトバンドが一時期のブームの後(主にアカウンタビリティが不十分だったことにより)かなり叩かれたことを、俺は忘れていないのである。

*1:俺の誤字ではなく、原文ママ

*2:いや、本当にそんなに大したことじゃないんだが、これ以外に言い方が思いつかない……