筒井康隆『朝のガスパール』

朝のガスパール (新潮文庫)

朝のガスパール (新潮文庫)

朝日新聞で毎朝掲載された新聞小説。タイトルは明らかにラヴェル『夜のガスパール』のパロディなのだが、俺は『夜のガスパール』を読んでいないので、この辺はサラッと流しておく。
本書の一番の特徴であり魅力は、実験的なメタ構造を持っているという点である。Wikipediaで綺麗に整理されているため、引用したい。

この小説には世界が5重に存在する。オンラインゲーム「まぼろしの遊撃隊」内の世界、そのゲームに熱中する主人公達の世界、その主人公たちの物語を書いている(という設定の)小説家(筒井康隆ではない)や編集者の世界、その小説家の新聞連載に影響を与えている投書やBBSの世界(作者筒井康隆の脳内とも言える)、その投書を書いたりBBSに書き込んだりしている読者(現実)の世界である。通常ならば互いに交わるはずのない5つの階層に、筒井ならではの文学的実験(メタフィクションの手法)が試みられる。

ASAHIネット(今でいうとインターネットとニアリーイコール)の活用が最も前衛的だが、ネトゲ世界に早くから着目しているのも実は密かに凄いと思う。