赤名修+真刈信二『勇午 パリ編』

勇午 パリ編 (講談社漫画文庫)

勇午 パリ編 (講談社漫画文庫)

功率97.4%を誇るフリーの交渉人・別府勇午による社会派ストーリー漫画。Wikipediaを読んでいて気づいたのだが、ほぼ全てのシリーズにおいて、交渉の過程で勇午が拷問を受ける羽目になる……という、なかなかアレな漫画でもある。
パレスチナイスラエルにおける終わりなき対立とテロリズムをテーマとしたのがパリ編である。パレスチナ問題は、最も解決が難しい民族問題のひとつと言って良いだろう。というか、もう永遠に解決することはないんじゃないかとさえ思う。そもそも今現在リアルタイムで悪化と小康状態を繰り返す緊迫した問題で、そのアクチュアリティが10年や20年で風化することはないだろう。その中で勇午パレスチナ側のテロ集団に身を寄せ、共に活動している。勇午の交渉の中身が何なのかわからないまま、絶望的な対立構造の中で勇午の足掻きを見守ることになるという、かなり興味深いプロットになっている。