月刊美術・編『写実画のすごい世界 限りなく「本物(リアル)」な女性たち』

写実画のすごい世界

写実画のすごい世界

俺が初めて買った画集である。
絵画はまさに「百聞は一見に如かず」である。有名な写実画をネットで拾ってみたので、まずは見てほしい。


このような絵を写実画という。本書では「実際にあるものを徹底的に、細密に写生してリアルさを極めた絵」と定義しているが、写実画を見ると、絵全体を見ると写真でないことはわかるのだが、見た瞬間は、あるいはパーツ単位では、絵なのか写真なのか混乱してしまうほどリアルである。こういう絵は俺のような素人にも「凄さ」がわかりやすい。
本書は大御所から若手まで、24人の写実画の描き手を紹介している(島村信之・生島浩・小尾修・原崇浩・石黒賢一郎・森本草介・野田弘志・小川泰弘・五味文彦・山梨備広・三嶋哲也・塩谷亮・渡抜亮・卯野和宏・小木曽誠・山本雄三・山本大貴・橋爪彩・益村千鶴・中島健太・廣戸絵美・藤田貴也・加藤裕生・茶谷雄司・石田淳一・高橋和正・岡靖知・本木ひかり)。ほとんど知らないが、島村信之や森本草介は本屋で平積みされていたので記憶があるなあ。
島村信之画集  光の方へ 森本草介
解説は読まず、とにかく「絵」だけを堪能しまくった段階で感想を残しておくと、やっぱり「写実画」と「写真」は別物だなと感じている。素人考えだが、写真は良くも悪くも、そこにあるものをあるがままに「切り取る」表現技法であり、フレーム・インしたものはたとえノイズであっても基本的には排除することができない。そこが良さ・面白さでもあり、難しさでもある。一方、写実画は、対象をどこまで精密に描くかを描き手の能力と意志に委ねることが出来る。どこまでを作品として描くかを選ぶことができるため、構図の中の不要なものを排除することも出来るし、逆に付け足すことや補正することもできる。また色味は描き手がパレットの上で作り出すものである。さらに写真のような「ピント」や「レンズ」の概念を取り入れることも、また取り入れないことも自由である。つまりリアルではあっても、単に写真をトレースしただけの作品ではない。
俺は写実画を見るうちに、描き手の執念のようなものに気圧される感覚を覚えた。特に、風景や静物ではなく、上で挙げたような若くて綺麗な女性を徹底的に細密に描いている写実画などは、もう理屈抜きのリビドーとしか言いようがない。そして、ここまで対象と向き合えるのかという畏怖を感じる。
「ホキ美術館」という写実画を専門に収集・展示している美術館が千葉県にあるそうだが、是非ここは行ってみたいなあ。