森沢洋介『英語上達完全マップ』

英語上達完全マップ―初級からTOEIC900点レベルまでの効果的勉強法

英語上達完全マップ―初級からTOEIC900点レベルまでの効果的勉強法

仕事環境が激変した。今のプロジェクトは外資系企業の支援なのだが、何と上司と同僚とクライアントが外国人になってしまった。しかも、いわゆる「バイリンガル」や「トライリンガル」だけではなく、日本語を全く話せない方が何人もいる。そのため、メールや資料が英語になったばかりか、何とミーティングまで英語に!
……という話は、フィクションであれば良かったのだが、残念ながら事実で、これは私の3年前の実際の出来事である。まあこの件は(英語が全然わからないなりに)何とか乗り切ったのだが、先日CASECという英語テストを受けたら、何とTOEIC 370点相当。危機感を覚えた3年前に続いて再度強烈な危機感を覚え、さすがにヤバいだろうということで、これまでも読んだことのある本書を改めて読み返した次第。もう何度も読み返した本だけど、今年は読書量を減らしてでも英語学習に取り組むことを決意。ブログでも定期的に更新しよう。
思うに、大人は子供ほど反復性に対する根性がなく、他に色々やることもあるので、「好きなこと」か「具体的に役立つこと≒やらなければ具体的に不利益を被ること」でなければ、学習が続かない。しかし、英語というのは知識(知っている)だけではなく運用スキル(使える)として磨かれなければならないわけで、反復は避けられない。これが矛盾というか、大人の英語学習を阻む最大の壁ではないかと思う。
本書は、このポイントを的確に捉えており、理解できる英文あるいはフレーズを耳・口という音声器官を通じて出し入れすることを繰り返すことに尽きる、すなわち「魔法」はないのだということを強調する。著者の主張を私なりの言葉で言い換えると、

  • 単なる「お勉強」ではなく「トレーニング」をする。
  • トレーニングの反復性は我慢してほしい。語学は筋トレと同じで、反復しなければ運動性能は上がらない。
  • ただしトレーニングの反復ができるだけ退屈にならないような工夫はする。

といったところだろうか。
本書では「知っている」と「使える」の橋渡しとして「音読パッケージ」と「瞬間英作文」という手法を重要視しているが、結局は「多読」も「精読」も「リスニング」も「文法」も「単語」も「発音」も「会話」も全部やれと言っている。ただ本書は、それぞれの学習領域/学習方法のプライオリティやリンケージや取り組み時期には、独自の考え方を持っている。例えば、通常リスニングトレーニングと思われているシャドーイングやリピーティングを「音読」のトレーニング方法に統合しているし、文法も分厚くてマニアックな文法に習熟することは求めない。さらに「単語」を独立して覚える(いわゆるボキャビル)は、ある程度の英語力がついてからを推奨している。最初は単語が無いと読めない気もするので、これも新しいと言えば新しい。言い出すとキリがないけれど、色々と考えられているなぁという印象。