国枝昌樹『報道されない中東の真実』

報道されない中東の真実 動乱のシリア・アラブ世界の地殻変動

報道されない中東の真実 動乱のシリア・アラブ世界の地殻変動

中東問題の「実態」をリポートする本となっているが、著者が元在シリア大使であるため、シリア問題を250ページ以上もかけて綿密に記載し、その後は各国3〜5ページ程度でロシア・イラン・イラク・レバノン・米英仏・カタール・サウジアラビア・トルコ・イスラエル・国連について素描する……という構成。『報道されない中東の真実』という書名にするのであれば、個人的にはレバノン・カタール・サウジアラビアあたりはもう少し詳しく書いてほしかったがなあ。
でもシリア問題については非常に詳しい。シリアの過去・現在・未来という時系列での分析、体制派と反体制派に分けての分析、宗教対立というテーマで第1章〜第3章を書いているが、よくもまあここまで複雑に対立できるなという思いがある。日本が何だかんだいって(アイヌなどを除けば概ね)単一民族で構成され、宗教問題も激しくないから、そう感じるだけかもしれない。しかし日本もダイバーシティが進むにつれて、民族問題や宗教問題が過激になっていく可能性はある。